秀逸な話

秀逸(言いたいだけ)な話。

御殿場の秀逸な話

20代のアルバイト生活

今日でアルバイト生活は終わりを迎えた。

いつ転職するか、いつ面接が入るかなど先行きが不明な状況のため派遣型のアルバイトに従事していた。週末になると翌週のシフトを入力する形式で働けたので助かった。

 

上京してからは、ひたすらパンフレットを折る仕事、ひたすら穴を空ける仕事、ひたすらダンボールを組み立てる仕事、コンテナにクソ重い荷物を積み込む仕事、プラスチック制作工場で何の部品か分からない製品を制作する仕事などを3ヶ月近く、ひたすらに取り組んでいた。

 

単発の派遣先が多い中、プラスチック制作工場には2ヶ月半程お世話になった。

単発の派遣先では派遣アルバイトは人間以下のような扱いをされることもあり、ここは江戸時代かよと思いながらパンフレットを折っていたこともあった。

 

しかしながら、プラスチック制作工場では休憩時間にお菓子を頂いたり(取引先から頂いたお菓子を派遣アルバイトにも渡してくれた)時間が合う際には駅まで送って頂くなど今どき珍しい(と思う)人情溢れる会社だった。

転職が決まり、2月末でしか働けない旨を社員の女性、薫子さん(仮名)に伝えると「え、そうなんだ。おめでとう!でも…あれだよね。なんというか…。タナカくんに会えなくなると寂しいというか、顔を見ることができないと思うと寂しいというか、いや、でもさ、ちゃんとしたところが決まって本当に良かったと思う。私も嬉しい!」と寂しいような、でもなんだか嬉しいみたいな、家を出ることが決まった息子に話しかけるオカンの様な顔をしながら、小刻みにジャンプしたかと思うと3メートルくらいある天井まで飛び上がり、天井に頭をぶつけていた。鮮やかな血が頭から流れ出ていた。真っ赤な血だった。床に赤いのが垂れていた。思わず「大丈夫ですか?血、出てますよ?」と心配したものの、薫子さんは流血している部位を掌で押さえながら「タナカくん!今日もがんばろうね!」と苦しみの感情が一点も無い眩しい笑顔で答えた。すると、どうしたことか流血はスンと止まった。これが社会人か。これが会社に属する人間の「ケツイ」か、と思った。私も3月から会社に属する人間になるので流血した際には薫子さんの様に振る舞えるのか。その点だけが心配で仕方が無いのです。

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