秀逸な話

秀逸(言いたいだけ)な話。

御殿場の秀逸な話

【ロゴス】

 独り言は誰かに聞いてほしいし、就寝時に部屋の灯りをつけているのは夜が怖いからじゃない。手首の傷は生きたい意思表明、別に死にたい訳じゃない。

 夏目さんはふらふらしながら、生きているようで死んでいる。猫の頭に花が咲いてるのを見たことがある。これが現実なんだ。

 先日、知り合いの斑目三太郎、斑目の知り合いの牛角静流子、静流子の趣味友達(ミニ四駆愛好会)のエムピッピと鍋パーティーをする機会があった。

 静流子さんの趣味友達(ミニ四駆愛好会)のエムピッピさんは本名では無く、所謂ハンドルネームと呼ばれるwwwインターネット上で何らかの活動をする際に、本名で活動すると炎上した際に現実世界で何らかの被害を被るリスクを避けるために使用する偽名の事を指す。また、炎上とは物質が燃え上がる様子を指すのでは無く、例えば「駅前のパン屋の接客マジでサイテーだったんですけど。釣り銭と一緒に生きたザリガニを渡す店だったんですけど。しかも買ったパンにビニル袋が混入していてマジでアグリーです。最悪な店なんで行かないほうがいいです。マジで。」等と虚偽のレビューをwwwインターネット上にアップする。アップとは掲載する意味合いでよろしくどうぞ。他のインターネット用語はググってくれ。ググるの意味はGoogleでググってくれ、頼むから。忙しいんだよ、私も。分かってくれよ。早いが話、炎上の意味はググってくれ。

 楽しい鍋パーティーになるはずだったのに、初めて鍋パーティーに参加する嬉しさが空回りしてしまい、夏目さんは卓上に置かれた土鍋を持ち「トルネード選手、行きます!」と絶叫したのち、砲丸投げの要領で土鍋をぶん投げ、空に浮いた土鍋はそのまま壁にぶつかり割れてしまった。鍋が無ければ鍋パーティーはできない。土鍋があった卓上に陳列していた肉や野菜、マロニーちゃんは泣いていたに違いない。

 鍋が壁にぶつかり割れた瞬間、夏目さんは自分が起こしてしまった過ちに気づいたものの「ぐぎょぎょ!スッポン鍋はケチャップで食べるのが1番!」しか言葉が出てこなかった。

 突然、土鍋を持ったかと思えば土鍋をぶん投げて割った夏目さんを見て、斑目三太郎、牛角静流子、エムピッピは唖然とした。割った後に訳のわからない言葉を吐き出したので、シバこうかなとも思った。3対1なら人数有利。しかしながら、いきなり土鍋を割った上に「すみません」の言葉が出てこない人間のカタチをした悪魔をシバくことは容易では無い。訳がわからなくなり、3人はとりあえず泣いた。一斉に。

 人間、奇妙奇天烈な出来事を目の当たりにすると信じられないくらいの涙が流れる。

 3人の涙はたちまち室内を満たす水量となった。斑目三太郎は金魚に、牛角静流子はタニシに、エムピッピは水草にメタモルフォーゼした。

 室内に満たされた水の中、夏目さんはエラ呼吸をしながらその様子を見ていた。手首の傷がうずいた。「あぁ、これが生きるってことか」と思い、金魚とタニシを水草に巻いて食べた。

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