秀逸な話

秀逸(言いたいだけ)な話。

御殿場の秀逸な話

送運のせ幸

鏡を見ると、イケメンが立っていた。ぼんやりと見るとオレだった。目をカッと開き、メンチを切るように見てもオレだった。

 

「禁煙、始めました!」

禁煙をしたことにより、顔がよりシュッとした結果、さらにイケメンになった。

 

冷やし中華、始めました!」の貼り紙を見かけると、夏の到来を感じる。

しかしながら「禁煙、始めました!」の告知、宣言を見ると、どうだろう。特にないよね。「はぁ、そうなんすね」って思うよね。

 

先月から味覚と嗅覚がデスボックス。最近は徐々に、感覚が戻ってきた。体感50%くらい。濃い味。ソースとか、醬油と砂糖を使った煮物だとかは味が分かるものの、ダシを使った汁物だったり、チョコレートがかかったドーナツとか、菓子類の甘みがあんまり分からない。中学生の恋愛事情くらい分からない。

 

明確な治療もないので、感覚が戻るのを待っている最中。

せやけど、オレの人生に「待つ」なんてカードは無いわけで。ぜーんぶ、アグレッシブに動いてきたわけで。リフォームの匠がここで、仕掛けるッ!ってくらいに、何か変えてみようと思って、禁煙を始めました。

 

禁煙を始めて、本日で約2週間。「タバコ吸いたい~~~」なんてことは、ない。禁煙開始から3日ほど、離脱症状中はイライラした様子だったと彼氏は語っていたけど、自分的にはイライラしていなかったので、一緒にいる人ならなんとなく、本人すら認知していない些細な感情が分かったりするのかなと思った。

 

ただ、冷やっこに醬油をかけている時に「普段はニコニコしながらお醬油をかけてくれてるのに、今日は真顔でお醬油をかけてる!イライラしてるんだよ。」と言われた件については、ちょっと待って欲しい。

 

オレが気づかないだけで、オレは普段、豆腐に醬油をかけているときにニコニコしている!なんてわけがない!!!!豆屋か。豆腐屋か。豆の化身か。

 

そう思いながら、三脚にスマートフォンを固定し、冷やっこに醬油をかける自分を撮ることにした。スマートフォンのビデオ機能を用いて、冷やっこに醬油をかけている時にオレの顔がニコニコしているのかどうか検証をすることにした。

 

白い四角形の食べ物に黒い液体をかけている最中に、口角を上げるなんて普通に考えて、ありえない。トラのシマシマギンガムチェックになるくらいありえない。

 

三脚に固定されたスマートフォンのビデオモードを起動。レンズは卓上を向いている。

 

「柔らか絹ごし豆腐!豆のおいしさギュギュっと!」とパッケージに書いてある豆腐を半分に切り、平皿にそっと盛る。豆腐の頭頂部に生姜をのせる。そして、醬油をかける。醬油をかけたあとに、スマートフォンのビデオモードを停止し、撮った映像を見た。豆腐に醬油をかけている「色白切れ目塩顔男性」ことオレが、ニヤニヤしていた!

 

彼氏が言っていたことは真実だった。

 

今日から豆の化身として生き、皆様の食卓に、幸せを運送して参ります。

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