秀逸な話

秀逸(言いたいだけ)な話。

御殿場の秀逸な話

秋といえばコシ!コシ欲の秋!

タイトルを見て「ってことは、シコシコってコト!?なんとかなれ〜!!」と思った人はたぶん、小さくてかわいい人だとう。ちなみにオレは158センチでかわいいので小可愛です。わわ。

 

変わらず無職。誰にでも平等に時間は分配される。気づけば秋。秋風が気持ちいい。ムカつくくらい気持ちいい。

 

ある日、起床すると腰が痛かった。魔女に腰を 蹴られたくらい痛かった。魔女に腰を蹴られたことはないけど、そのくらい痛かった。

 

魔女というくらいだから、脚力はゴリラくらいあるだろう。もしくは、魔法を使って脚部だけにパワーを集中させて壁を破壊。室内にいる子どもをさらい、隠れ家に連れて帰り、大鍋に子どもを入れ、水を適量、鶏ガラスープの素、長ねぎ、白菜などを投入。あとは材料に火が通るのを待つ。食べる際はポン酢に浸して食べましょう。

 

鍋のシメはちゃんぽん麺だよね〜!いいや、うどん麺だね!なんて話し合う。そんな日常は流行りのウィルスのせいで、遠い過去のことのように思う。オレは。

 

みたいな感じで腰が痛く、歩くのもままならないので某人気無料FPSゲームのダウン時モーションみたく、ハイハイをしながら家の中を移動することになった。鼻をかみたいと思い、ティッシュを探した。

 

大人になると当たり前過ぎて分からなくなるが、大人がよく使う物、例えば、ティッシュは大人が手に取りやすい高さに置かれている。棚の上とかベッドの上とか。

 

ハイハイ状態、つまり赤ちゃんの目線だとティシュの場所を特定することはできない。なぜなら視認できないので。

 

ただ、オレは赤ちゃんじゃない。大人だ。30歳だ。ビッグベイビーや。ティッシュの場所くらい分かるわ。せやけど、腰が痛くて立てんわ。ティッシュ取れんわ。いや、立てるには立てるけど時間を要したり、腰の痛みで顔が歪んで、かわいい顔が台無しになったりする。それは避けたい。

 

せやから、そう、ティッシュを使わんやったらええんや。鼻から水が垂れれば手の甲を使う、水をこぼせば全て吸う、手が汚れれば舐める。あぁ、先人の知恵や。ぽたぽた焼きや。

 

そう思いながら、大人が手に取りやすい配置にあるティッシュに対してブチ切れていた。ブチ切れながらも腰を治したいとも思った。病院へ行こう!と思う前にタクシーを呼んでいた。

 

自宅の前にタクシーは到着した。タクシーで最寄りの整形外科を目指す。タクシーで最寄りの整形外科を目指す。頭の中でリフレイン。しかしながら、ハイハイでタクシーに乗る事は難儀なので玄関まではHi-Hiになりながらハイハイで移動。

 

玄関に到着し、腰の痛みの耐えながら靴を履き、ゆっくりと、そろーりと立ち上がる。玄関からタクシーまでわずか3メートルほど。楽勝、と思いながら玄関の扉を開き、タクシーの運転手に会釈した。運転手と目があった。扉に鍵をかけ、タクシーに向かった。

 

と、どうだろう。通常の歩幅が仮に30センチとすると、この時の私の歩幅は1センチくらい。腰が痛くて足が前に出なかった。わずか3メートルの距離なのに、ぽてぽてと歩けない事に絶望した私は鶴になった。鶴になって飛べば全て解決する。鶴亀万年。俺腰痛。

 

鶴になった私を見て運転手は「縁起がいいですね〜。私も鶴に憧れた時期もあるんですよね。」なんて喋りながら、私が乗車するまで待ってくれた。その顔は穏やか。

 

やっとの思いで乗車。生き地獄ですわぁ。目的の整形外科の住所を伝え、車は走り出した。と同時に運転手はうっすら笑いながら「腰痛ですか?辛いですよね。私も数年前に腰をやっちゃってね。いろいろ病院に行ったけど、なかなか治らないし、こういう職業でしょ?座ってばっかりだから腰が辛くてね。でもね、湯船で体を温めたあとに湿布を貼る。そんで、サラシを巻くんだよ。ぐるぐるに。そうしたら、すぐに良くなりますよ!ガハハ」なんて話しかけてきた。

 

しかし、私は腰が痛くてそれどころじゃない。必要最低限の会話しかしたくない。しかも、鶴になっている。喋る鶴なんてものが実在すれば、お金儲けできるかなぁなんて銭のことを考えながら足元を見ると、人間の足だった。手を目の前にあげた。人間の手だった。オレは鶴じゃなかった。もともと人間だったのか、人間に戻れたのかは分からんが、まさしく、人間だった。

 

腰の痛みも同時になくなっているのではないか?と思い、尻を座席から数ミリ浮かし、ぷりぷりと揺らすと腰に痛みが走る。夢ではなく現実を叩きつけられた。

 

運転手はオレに向かってなにかを喋っているが、人間であることに安心したオレの耳には何も言葉が入ってこなかった。タクシーは整形外科へと向かう。

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