秀逸な話

秀逸(言いたいだけ)な話。

御殿場の秀逸な話

キープサマー

夏らしいことはしてないのに、夏がもう終わる。

 

日曜日。ベットで溶けながらTwitterを眺めていたらフォロワーが散歩の写真をあげていた。その写真を見てなんとなくオレも散歩をしたくなった。散歩をするならどこか目的地に向かった方がいいと思い、グーグルマップで自宅周辺をサーチアンドデストロイ。

 

なんとなくよさげな個人でやってそうな喫茶店を見つけたので出発。夕方前にも関わらず日差しは夏の顔をしていたので、バケットハットを被って。

 

流行り病もあって外出するペースがグンと、いやグググンンンゴゴと減ったのもあって、家の近くにこんな店が!と新しい発見をしながら、ぽてぽてと25分ほど歩いて喫茶店に到着。

 

無口すぎるマスターだった。ケーキセットを頼むと盆を持ってきた。盆の上には、ショートケーキ、チョコケーキ、モンブラン、梨のような色合いのムースのケーキ、ベリーのような色合いのムースのケーキが乗っていた。お盆の上にあるケーキをマスターは指を指した。「どれにするん?」ってことやね。迷わずチョコケーキにした。

 

頼んだHC(ホットコーヒー)とチョコケーキ。めちゃくちゃ輝いていた。なんせ約1年ぶりの喫茶店。無口のマスターが淹れるこだわりのコーヒー。めっちゃいいやん。めっちゃいいやん。大事なことなので復唱。

 

ただ、ブログに繰り返しかいてあるように、現在味覚と嗅覚がストライキを起こしている。チョコケーキは、なんか重たくてふわふわしているもの。HCは、なんとなく苦くて舌の上にきび砂糖が乗ってるような重さを微かに感じる黒い温水だった。分かっていたけど、悲しかった。悲しかったけど慣れてしまった。そのうち治るでしょう。

 

ふわふわしたものと黒い温水を口に運んでいると、若い女性が2人入ってきた。

 

すると、さっきまで無口を貫いていたマスターが「いらっしゃいませ!お好きなところにどうぞ!」と喋りだした。さらには「注文は決まった?」「ブレンドとアイスね」などと言葉が出てくる。もしかするとマスターは一卵性の双子で、さっきまで店内にいたマスターは無口な兄。言葉がスラスラと出ているマスターは弟なのかもしれない。もしくは、荒れ地に住んでいる悪い魔女に「一定時間、言葉を発することができなくなる寡黙の魔法」をかけられたかもしれない。誰も真実を明かすことはできない。それこそが喫茶店の魅力。最高。喫茶店最高!!!!

 

700円を払って店を出た。喫茶店の近くに花屋があったのでピンク色のバラを1本買った。せっかくなのでバラを口に咥えながら帰宅することにした。バラの茎にはトゲが生えていて唇や唇の周りを紅色に染めた。不思議と痛みは無かった。むしろ、デトックス効果なのかすがすがしい感じもしてきた。夕暮れが優しくオレを包んでくれるような気もしてきた。今ならなんでもできる!と思い、ドミノピザでピザを買って帰ることにした。

 

スマートフォンでお持ち帰り予約なるものを完遂。詳細は秘密です。どんなに仲が良くてもひとつやふたつ、秘密くらいあってもいいじゃん。外でお持ち帰り予約をしていると足や腕に蚊が寄ってきた。こんなところで夏を感じたくなかったけど、蚊を叩き潰す度に夏がやってきた。間違いなくオレはこの夏を謳歌した。

 

無事にピザを受け取り家に帰る。我が家は住宅街にある。閑静じゃない住宅街ってあんまりないような気がする。パーティーパーティーしている住宅街があったら教えてほしいなぁと思いながら歩いているとカレーの香りが、煮物の香りが、魚を焼いたような香りがする。嗅覚がストライキを起こしているはずなのに、確かに香りがする。灯りがついている家庭からは他にもウッディな香り、柔軟剤のような柔らかい香りも。真っ暗な家庭もあった。恐らく週末を利用して外出してるんだろう。そして外出先で夜飯を食べ、帰宅するんでしょう。

 

家に帰れば彼氏が待ってるなと思い、灯りがついている我が家へと気持ちが急ぐ。気づけば日が落ちかけていて風は秋の涼しさ。蚊に刺されたところが痒い。

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